イギリスでは風邪をひいた際の手順が、日本と違いすぎる

実は、つい最近、風邪を引いて寝込んでいました。

風邪を引いたのは去年の夏、コロナにかかったのが最後。そして、その前は(思い出せるかぎり)7年前のインフルです。少なくとも、風邪で病院に行ったのはこの2回のみ。

風邪を引かない強靱な免疫機能を有していると自負していたので、イギリスの医療制度について詳しく調べていませんでした。いや、メディカルライター(前職)という仕事柄、制度の概要は知っていましたが、実際に風邪を引いたら何をすればいいのか知りませんでした。

というわけで、熱が出てから、慌ててイギリス人に質問しまくったので、その内容をまとめてみたいと思います。

GPに登録

GPは、日本語で「かかりつけ医」と訳されることが多いですね。しかし、日本でのかかりつけ医とは少々異なっています。

イギリス在住者は、全員がGPに登録することになっていて、GPはNHSというイギリスの医療制度において、患者が最初にコンタクトをとる医者です。NHSが提供する医療はすべて無料です。処方箋は別途費用がかかります。

イギリス英語で診療所のことは、practiceとかsurgeryとかいいますが、GPはこれらの施設に所属しています。Surgeryって、アメリカ英語だと「手術」なのですが、イギリスでは「診療所」または「医院」。うーん、紛らわしい。

ひとつの診療所に1人のGPという場合もあるし、3人、4人と複数のGPが所属している場合もあります。

しかし、すべてのイギリス在住者は、ひとりのGPをかかりつけ医として登録します。

この登録は、イギリスに住みはじめたらすぐにしておいた方がよいですね。
これをしていないと、NHSの医療を受けることができず、自由診療の高額な医療費の医者にかからなくてはならなくなります。

また、「GPガチャ」なるものがあり、よろしくないGPに登録してしまうと、診療が受けられなくなってしまう場合があります。予約が取れないとか、患者が多いとか、診療時間が短いとか、そういう理由です。

そのため、GPを患者がレビューするサイトがあります。ぜひチェックしてから、登録をおすすめします。

GPの登録は、英国政府のウェブサイトで、近所のGPを探し、登録します。
引っ越しをしたら、GPを登録し直す必要があります。そうしないと、引っ越し前の地域のGPにかかることになってしまいます。

オンラインで登録できるGPもありますが、実際に診療所に行って登録しなくてはならない診療所もあるよう。

わたしは、オンラインで登録ができるGPにしました。21世紀、テクノロジーにキャッチアップしていない人の診療は受けたくないなあと思って。

風邪を引いたら、GPを予約

GPの診察を受けたい場合、まず登録しているGPに電話して予約をします。
当日予約(same day appointment)もできます。

オンラインで予約を受け付けているGPもいます。これは診療所によって異なります。

そして、運良く予約ができたら、診療所に行くだけ。

なにも持っていかなくてよいようです。日本の病院のように保険証や診察券はありません(GPによるかもだけど)。ただ、薬を処方された場合、無料ではないのでお金は持っていった方がいいかも。

GPが予約できなかったら「111」に電話

GPが予約できなかったが、どうしてもその日に医師の診療を受けたい。

そんな場合「111」に電話します。

111に電話して繋がる先は「NHS 111」。まんま、ネーミングセンスないですね。

NHS 111は、緊急に医学的アドバイスが欲しい場合、助けてくれるNHSのサービスです1

でも、風邪くらいだと「水をたくさん飲みなさい」と言われるくらいらしい。
まあ、ウイルス性の風邪なら、薬で退治できないのでそれはそうなのですが。Fair enough.

超高熱だとか、脱水症状を起こしているとかいう場合で、処方薬や点滴などの処置が必要そうだとNHS 111のスタッフが判断した場合、最寄りのWalk in centreやA&E(Accident and emergency)を紹介してくれます。

そして、指定された場所へ行き、診療を受けることができます。

本当にやばかったら999

本当にやばかったら「999」に電話します。救急車を呼ぶ番号で、日本でいうところの「119」です。

ただ、999は救急車も警察も消防署もすべて999なので、最初にどのサービスを必要としているか言わなくてはなりません。

というか、999っていいですよね。覚えやすい。

わたし、119が覚えられないんです。いや、覚えていますが、911か119かどちらかわからなくなってしまう。

911はアメリカで警察や救急車を呼ぶ番号です。どちらが日本で、どちらがアメリカか、本当に覚えられない。記憶力が悪すぎる。いや、紛らわしいのが悪い。

その点、999は覚えやすいので好きです。

P.S. 結局、GPにはかからず回復しました

わたし、病院も医者も嫌いなんですよね(医者のお友達は好きです)。

大学生の頃は、単に医療費がかかるから嫌だったけれど、サイエンスや医学を学ぶにつれ、内科医ができることの可能性の小ささを知って、行きたくなくなりました。

内科医の仕事のメインは、医療用医薬品(処方箋が必要な薬)を処方することだけれど、たった3分くらい症状について話したところで、最適な処方薬を処方してもらえるとは限りません。どの薬が個人に最適かは遺伝的要因なども鑑みなければならない。けれど、そんなオーダーメイド処方をしている時間は医者にはありません。

結局、風邪くらいならば、ありきたりな処方薬を渡されて、終わり。「ゆっくり休んでね」。

だから、風邪のときには、病院に行くのに時間や体力を使うくらいならば、寝て回復した方が良いと思うのです。

病院でさらに別の病気をもらう可能性もあるし。とくに、待ち時間が長い病院だとなおさら。

まあ、抗生物質が効くような病気だったら、嬉々として処方箋をもらいに行きますけれどね(わがままだなあ)。

あと、これは内科診療のケースで、外科だったらまた別です。
そう、1年前、テニスで肘を痛めてしまい、整形外科に行きました。結局、レントゲン撮られて、異常なくて、シップ渡されて終わりでしたが。

というか、骨折とかヒビではないと確信していました。まあ、一抹の不安はあったけれど。

実は、シップが欲しかったから、整形外科に行きました。市販されているシップって高いじゃないですか。1箱数枚しか入っていないのに1000円とか。しかし、整形外科から処方箋をもらって、薬局でもらえるシップは大量かつ安価。600円とか。3割負担だからねん。

テニスをした後に、たまに足やら腕やらが痛むことがあるのですが、このときにもらったシップを使い回しています。イギリスにも持ってきました。

まあ、わたしがやっていることはあまりよろしくない医療制度の利用法なので、マネをすることはおすすめしません。

ただ、病院に本当に行ったほうがいいのに、行かない患者さんもいます。たとえば、アトピー性皮膚炎。

前職で皮膚科の仕事をしていたのですが、近年、新たな科学的機序の発見があったりして、アトピー性皮膚炎や乾癬は、治療の選択肢が非常に増えています。ただ、新薬なので非常に高価ですが。月何万円もかかってしまいます。

興味がある方は、こちらを読んでみてください。昨日のブログでご紹介したブルーバックスからのおすすめです。

にしても、まさか風邪を引くとは… わたくしの自慢の免疫機能…

おかげで、イギリスで知り合った方に夕食に招かれていましたがキャンセルせざるを得ず、また本日の英国稲門会の定例会にも参加できませんでした。 いや、今日は体調が良かったので、参加しようと思ったら、すでに参加が締め切られていた(わあ泣)。

わたしの免疫機能は、日本土着のウイルスには耐性があって、イギリスのウイルスに対する抗体はできていなかったのだろう、と結論づけておくことにしました。

海外暮らしは大変だあ。

Lina (ライター)
早稲田大学卒業後、新卒でフリーランスライターとして活動開始し、現在はロンドン在住。ブログやYouTubeでも情報発信中。鹿児島出身、趣味はテニス。
  1. https://www.england.nhs.uk/urgent-emergency-care/nhs-111/accessing-nhs-111/

コメント

  1. リナさん はじめまして。
    イギリス在住暦40年です。昔のGP制度ですと自宅の近くのエリアにあるGPにしか登録することが出来ませんでしたが、今はその制限が解除されエリア外のどこにでも登録が可能になりました。勿論、自宅の近くだと病気した場合便利ですが、他のよい評判のGPをお探しになってはいかがですか?イギリスは日本と違って遠慮しないでズバズバ自分の為にデマンドしていかないとやって行けませんよ。私の場合、風邪で喉が痛くなった時点で生姜のシロップを1ー2回ちょっと飲むと一日で治ります。まあ、イギリス、日本にも闇は色々ありますよ。笑