高学歴で給料や生活の質が向上する社会は非常に良いのではないか

こんなことを書くと、バッシングが来そうですね。炎上しそう(ぶるぶる)。

「学歴」は重要かどうか。最近、これについて考える機会が非常に多いです。日本を去ってイギリスで生活をはじめたからです。

わたしは早稲田大学を卒業しましたし、その前も鶴丸高校という偏差値が741もある高校の出身です。74って本当なのかしら。模試とかで偏差値74なんて取ったことないぞお。

まあ、どちらにせよ、「高学歴」と呼ばれる部類の人間だと思います。

最近、「イギリスに来てから日本にいるときと比べて爆速でコミュニティが広がっている」というブログを書きました。この記事で、早稲田卒ということでロンドンでいろいろな恩恵を受けています、というようなことを述べました。

それをツイッターでシェアしたところ、以下のような返信がきました。

この方のコメントは感情的で突っ込みどころ満載ですが、それはともかく、興味深いのは、この人はわたしのファンでもフォロワーでもないのに、わざわざこのコメントを送ってきたということ。

たぶん、わたし以外にもこのようなメッセージを送っているのだと察します。おそらく、学歴社会を擁護するようなコンテンツをわざわざ見つけて、それを否定することが「趣味」な方なのかと想像します。まあ、その趣味が高じると「社会活動」と呼ばれるのでしょう。

日本は非常に堅固な学歴社会である一方、学歴社会を嫌悪している人が大勢います。

多くの人がおかしいと思っている。高学歴の人も、そうでない人も、です。

しかし、もし「おかしい」と思っていても、この人のように学歴社会を覆そうとする人はそうする力や権限がないし、力や権限を持っている人はあえて努力して学歴社会を覆そうとしません。

近況報告もかねて、イギリスでの2つの例を挙げます。

まず昨日、ロンドンで(たぶん)6、7年駐在されていたT田氏が帰任するということで、ご自身が主催のパーティにお邪魔させていただきました。

ザ・シティのおしゃれなパブを貸し切って数百人が出入りするようなパーティでした。T田氏には以前一度だけお会いしていただけなのですが、T田氏の人望の厚さを伺うことのできました。

ほとんどが日本人で、わたしは30名ほどと会話し、20名ほどと名刺交換をさせていただきました。

いただいた名刺は日本の一流企業のロゴ入り。話して感じた印象だと、90%程度が東大・早稲田・慶応のどれかの出身で、そのほかも京大や難関大学の理工系出身の方が多いようでした。また、企業名だけでなく、役職もかなりsignificantな方々でした。

正直、ふと「わあ、わたしって場違いだなあ」と感じることもありました。だって、わたしはただの「フリーランスライター」なのですもの。

新卒でフリーランスになったわたしには、一流企業をリードするような方々のお話を伺うのは非常に有意義でした。向こうは向こうでヘンテコなキャリアのわたしの話を面白そうに聞いていただけました。一流企業の方々同士も情報交換や異業種交流のようなものを楽しんでいるようでした。

起業されている方もいて、そのお話しも興味深かった。輸入業をされている方からは日本の美味しい食材がイギリスに届かない理由2を教えてもらったり、フットボール関連の仕事の方からはプレミアリーグの裏話を聞けたり3

ロンドンという異国に存在するハイスペック日本人コミュニティ。いい意味で非常に奇妙な空間でした。

【結論】このような面白い人たちと出会えるのは、やはり早稲田出身だというのが大きいといって間違いない。

学歴社会を覆すというのは、このような機会を減らすことに繋がります。なので、高学歴の人々があえて学歴社会を崩壊させることはないと思われます。

また最近、もうひとつ学歴について考える機会がありました。

わたしのビザはYMSなので、わたしはYMSコミュニティにもたびたび足を踏み入れています。

こちらは学歴がバラバラ。というか、学歴が高い人にはまだお会いしていません。学歴が高い人は有名企業に勤めている場合が多く、キャリアを中断するリスクの観点から「YMSでイギリスに行こう」なんて発想にはならないのだと思います。

ほとんどが人生を変えたくてYMSでイギリスに来ているという印象です。まあ、人生に満足していたり、明確なゴールがある人は、変化を求めませんからね。

しかし、正直な感想として、YMSで渡英しても人生は変わらないと思います。少なくとも、変わっている人はいないように感じます。むしろ日本にいたときよりも人生に暗雲がかかっている人が多くいる印象。人生が変わったとしても、海外旅行をして「人生が変わる」その程度だと思います4

2度お会いしたことのある27歳の女性は、イギリスに来る前、東京で過酷な長時間労働を強いられていたようでした。派遣社員として不安定な状況で働かないといけない5こともあり、そういう状況が嫌になって渡英したとのことです。

彼女はかなりフラストレーションが溜まっていて、渡英によって多かれ少なかれ人生を変えたいと思っているようでした。

東京で働いていた会社は早稲田だらけだったんですが、早稲田だからって優秀じゃないんですよね。なのに、向こうは総合職でいい給料もらって、私のほうが優秀なのにただのアシスタント。学歴が高い人って優秀じゃない。なのに、私の上司で、私は頑張っても上にいけない。

ちなみにこの時点で、彼女はわたしが早稲田卒だとは知りません。隠しても仕方ないので、機を見て申し上げましたが。

彼女の中では、学歴が低いために、望む暮らしや仕事ができないという結論のようでした。少なくとも学歴が大きな一因であるという結論。

つまり「学歴が低いということが自分の不幸の原因」という理論になっているんですよね。

対して、前回のハイスペック日本人パーティの場合、わたしの結論は「学歴が高いからこのコミュニティの一員となれる」という理論でした。

このように、とある状況の理由や原因として、「学歴」は非常にシンプルで使い勝手が良いのですよね。

しかし、学歴がゼロでも経済的・社会的に成功している友人がいますし、高学歴でも貧しかったり不幸せな人もたくさん知っています。

学歴が高いから良い仕事に就けるとは限らないし、学歴が高いからお金持ちになれるわけでもない。幸せには、ほとんど直結しないと言っても良い。

しかし、実際として、大学のコミュニティや派閥は、後ろから背中を押してくれる「風」程度の助けになるのは事実だし、18歳までの幼少期・青年期に勉強において努力し続けられた人はその後もハードワークをしつづけて「幸せ」を手に入れる確率は高くなる。

だから見かけ上、高学歴は人生が順風満帆の秘訣のように見える。それゆえ、多くの人が高学歴を得ようとするし、学歴を得られなかった人も自分の子どもには良い学歴を得てほしいと思うようになる。

そうココがポイント:自分の子どもに学歴を得てほしい

学歴が低い人が、自分自身が努力してもう一度難関大学を受験して、高学歴を手に入れようとはしないのですよね。

まあ、苦労して再受験して高学歴になったところで、良い仕事が見つかったり、給料が増えるとも限りません。ティーンエイジャーとはいえ、24時間受験勉強に費やせる高校生相手に、時間のない社会人が受験において同じ土俵で戦えるかというと非常に厳しい。社会人入試なるものもあるにはあるけれど、難関大では枠が少ないし、競争率も激しい。そもそも、社会人入試でも学歴フィルターが作用します。そして学生に戻るのは経済的にも厳しい。そもそもの日本人の低賃金も厳しい。

再チャレンジが非常に難しい国が日本です。お金持ちでないかぎりセカンドチャンスはないに等しいと言って良い。

だから、子どもに託すんですよね。

わたしは長く塾講師・家庭教師をしていたので、こういう現状を見てきました。同じ塾で上場企業の社長の息子も、月謝を出すのがやっとの家庭の子どもも教えました。

そして、実際、勉強することが最も確実な投資なんですよね。

子どもの教育費となると、教育費をかけたところで子どもが熱心に勉強してくれるとは限らないため、少しはリスクのある投資となりますが、それでも株に投資するよりもはるかに確実です。

イギリスは勉強に投資することが生活の質の向上に反映されやすい国だといえます。

イギリスの修士は1年です。イギリス人だったら安めの学費6で、1年で修士を得ることができます。かなりきついという噂ですがMBAも1年で取れるコースもあります。

専門を深めて給料アップを狙うために修士をとることもできますし、実務的な部分にフォーカスしたコースもありますので、職種・業界を変えたい際には修士を取得することで転職を有利にすることができます。

日本人の大人は学ばないといわれます。それは、当然です。

学んでもそれが還元される場が準備されていないし、そもそも学ぶことが難しい状況があるからです。学ばない日本人が悪いのではない。学ぶ理由がないだけです7

しかし、イギリスのように大人が学んで「高学歴」になることに再挑戦できる教育制度が日本にあれば、学歴社会への憎しみや怒りは消えるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

勉強することで給料アップしたり望む仕事を手に入れられたりして、その人たちが学びを生かすことで効率性や生産性が高まり、それゆえ社会がもっと豊かになり、豊かになったら雇用も消費も増え、さらに経済が回り、さらに給料や生活の質が向上する。「風が吹けば桶屋が儲かる」に類した理論的にはあながち間違っていないのでは、と。

勉強を頑張った人が必然的に給料が高くなるようにすることが、弱体化しつつある日本が再興する数少ない道のひとつだと思う次第である(と偉そうに言ってみるよん!)。

実際、社会人の「学び直しから転職まで」を政府が支援し、個人に助成金を与える制度が開始されるようです8

しかし、個人的にはこれでは不十分であるという印象。まず助成金額が少ない。それから学ぶ場が大学ではなく民間が運営する講座です。結局この程度助成したところで、学歴社会で戦える「学歴」を得ることはできないし、大学で学べるような知識やスキルも身につきません。大学と民間講座では学べるものの本質がかなり異なります。パソコンの使い方を学んだからといって、パソコンについて詳しいわけではありません。

やはり、セカンドチャンスは与えられていないに等しい。

15〜18歳の段階で、学歴の重要性や勉強の価値について理解しているティーンエイジャーがどれだけいるでしょうか。その段階で高学歴とそうでない人に二分され、それが社会構造として継続されつづけるのは間違っています。

大人が学歴や勉強の価値について理解しておらずに「無価値」と考え、勉強しなかった結果として低所得や貧困に陥るのならば、多かれ少なかれ自業自得だと思います。しかし、ティーンエイジャーがそこまで考えられるはずがありません。そして、ティーンエイジャーのときの決断が一生の足枷となるのは非常に酷です。

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また、国民全体が学ぶようになると、学歴社会そのものがなくなると思います。

たしかに大学を卒業したばかりの段階では、東大を卒業した人は、Fランと言われる大学を卒業した人より知識があるでしょう。しかし、Fランの人が学び続けてスキルをアップさせて、30歳や40歳で東大の大学院で学んだならば、大学卒業後に学ぶことを止めた東大の学部卒の人以上にスペックの高い人になりえます。

セカンドチャンスが提供される社会が健全です。

わたしはラッキーでした。16歳で進路を決める時期、わたしは学歴の重要性は全く理解していませんでした。実は大学なんて行きたくなかった。大学にいくくらいならば、他に挑戦したいことがたくさんあった。そのひとつが海外移住。結局、29歳にして実現しましたが。

しかし、大学に行かないといけなくなり、どうせ大学に行くならば有名な大学に行こうとなる。有名大学卒ならば、もし人生どん底に落ちても食いっぱぐれることはない。そんな理由で早稲田に入学しただけです。まじで、早稲田生、優秀じゃない。まじで何も考えてない。

世の早稲田生、ごめんなさい。いろいろ考えている人もたくさんいます。優秀な人もたくさんいます。

しかし、いまセカンドチャンスを求めて、セカンドチャンスが可能な国でどうにかあがいている最中なのです。

今後とも何卒よろしくお願いいたします(ぺこぺこ)。

Lina (ライター)
早稲田大学卒業後、新卒でフリーランスライターとして活動開始し、現在はロンドン在住。ブログやYouTubeでも情報発信中。鹿児島出身、趣味はテニス。

  1. https://www.minkou.jp/hischool/school/deviation/1151/
  2. イギリス政府が定める規制により、海外の美味しい食材がイギリスに輸入できないようです。イギリス人は食を向上させるという思考(もしくは嗜好)がないのかもですね。いや、衣食住のすべてにおいてそうかなあ。
  3. 久しぶりにファーガソン時代のユナイテッドについて話せて楽しかった(にこにこ)
  4. YMSビザで渡英して働く人の給料はだいたい1日90ポンド程度、良くて100ポンド。年収で25K以下です。日本円に換算したらそこそこの額だと思うかもしれませんが、ロンドンでは赤字になりかねない給料です。
  5. ちなみにわたしがいままで一番「幸せ」だったのは派遣社員時代なのですけれどね。そのうち記事にまとめます。
  6. 外国人向けの学費はバカ高いです。日本の私立大学の比ではありません。あ、私大医学部除く。
  7. それか新卒でフリーランスになるなどという無謀な賭けに出ないといけない。はい、わたしです。
  8. https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230619-OYT1T50028/

コメント

  1. りなさん、学歴社会の考察拝見しました。我が一族は高学歴で、私の義理の父は慶応卒で、地方銀行の役員まで登りつめました。私と家内は一橋大学卒で、私は日本の一流企業に勤務しました。更に私はシカゴ大学MBAで、外資企業で部長職を歴任し、高所得を得てました。長男はりなさんと同窓で早大文学部修士で、末娘の旦那は東大卒です。と高学歴を体験している訳で、確かに経済的には恵まれる点はあると思います。今自営でアパート経営できるのも、高所得の企業人であったからで、それは、高学歴に由来すると思います。ただ孫たちに受験戦争を経験して欲しいか?と言うと疑問です。生きたいように生きられる社会が出来れば、良いと思いますね。りなさん、興味深いブログ拝見。ありがとうございました。大都市東京から、いつも応援しております。御健やかにロンドン生活お過ごし下さい。

  2. 先のコメントにて、私の一族の概要をきしましたが、それに追記します。私の祖父の父は山梨県の大和村の村長でした。その村長の父は村の寺の住職でした。
    そのお寺は西光寺といい、中央線の甲斐大和駅から徒歩約5分です。今でも、私の先祖の住職のお墓はその西光寺にあり、約二年に一度は、お墓参りします。余計なことまで書きましたが、今の自分があるのは、先祖の住職の守護があるからだと信じています。興味深いブログありがとうございました。ごきげんよう。

  3. ブログ再度拝見しました。りなさん自身めもイギリスで孤軍奮闘中と書かれてますが、それは、大学院留学をするとの事ですか?或いは小説家を目指すという事ですか?まだ考慮中ですか?余計なことに立ち入りました。お許し下さいませ。ブログ興味深く拝見しました。ごきげんよう。