ロンドンに数年住んだくらいでは英語は上達しません

いつもブログを読んでいただきありがとうございます。読んでいない人は、はじめまして、ようこそ。本ブログを見つけてくれてありがとうございます。

最近、英語の上達について書いたブログ記事に、興味深いコメントをいただきました。

普通に地元にずっといらっしゃる様々な年齢層の方々と話す機会を探す、とすれば、スラングやイギリス独特の表現など新たに接することができそうに想像しますが、いかがでしょう?

これに対するわたしの見解は、「ロンドン以外ならばできそう」ですね。

ロンドンでは難しいかもしれません。ロンドンに1、2年住んだくらいでは英語力は向上しないと思います。実際、ロンドンに長年住んでいるのに全く英語力が向上していない人がたくさんいます。

ロンドン在住の日本人の方と、英語力の伸ばし方について話したことがあるのですが、結論は「ロンドンに住んでいるだけでは無理」。

いくつか理由を挙げていきます。

移民が多い

ロンドンの人口の37%が外国人です1。オーストラリアやニュージーランドからの移民がそれなりにいることを差し引いても、ロンドンで接する人の3割は英語のネイティブではありません。

そして、ロンドンに住んでいる日本人が接する人のほとんどがこの3割であると思います。

日本でコンビニやファミレスで働いているスタッフの多くが外国人であるように、ロンドンでもレストランやスーパーで我々がちょっとした会話を交わすstrangerはこのような外国人労働者です。

カフェで少し込み入ったオーダーをするときにあまり英語が通じないことがあります。例えば、サブウェイのようなファストフード店で「これをトッピングしてほしい」とか言っても通じないことが頻繁にあります。「ここ、イギリスだぞ」と突っ込みたくなることが多い。

日本の英語教育は非常に悪しきものですが、それでもイギリスに来るような人はベーシックな英語は習得済みです。現在完了形とか比較級とか知っているレベルですね。

このような日本人のレベルよりも、はるかに英語が堪能ではない人がロンドンにはたくさんいます。

なので、普通に生活していたら「かっこいい」イギリス英語に接する機会なんてほとんどありません。

イギリス人のコミュニティに介入しづらい

ロンドンは友達が作りづらいという特徴もあります。他のイギリスの地域と異なり「冷たい」「寂しい」場所だとイギリス人は言います。

イギリスの他の都市では、電車やレストランで隣に座った人と会話をするのが日常的なようですが、ロンドンではそのようなことはほとんどありません。

とはいっても、東京と比べるとはるかに多いですが。カフェで隣に座った人に話しかけられたこともありますし、知人友人同士を紹介する文化もあります。あと、ナンパもそこそこ、東京よりも多い。

では、友達が作りづらいロンドンに住むイギリス人はどのようにして友好関係を広げているのか。

まず、職場が友達獲得場所No.1らしいです。それから、フラットシェアをしていたら、同居人と仲良くなる場合があるらしい。あとは、元々の知り合い。ロンドン出身者は高校・大学の友達がそのまま大人になっても友達で、地方出身者でも「同郷」「同じ大学出身」という理由で、ロンドンに移住している者同士が仲良くなるらしい。

まあ、フラットシェア以外は日本とだいたい同じですね。鹿児島出身のわたしも、中学・高校時代にはただのクラスメイト程度の仲だったのに、お互いが上京してから、東京で仲良くなった友人が何人もいます。

ともかく、このような状況があるので、いざロンドンに来て「さあ、たくさんイギリス人の友達を作ろう!」と思ってもまず無理です。

生粋のイギリス人は元々コミュニティを持っているので、あえて新しい友達を作ろうとしていません。

となると、やはり移民同士で友達になるということになる。そして、移民同士はお互いカタコトのエイゴ。英語力は向上しません。

ならば、結局、日本語が通じる日本人同士で友達になることが多くなってしまいます。

日本人が働く環境は日本語を使う場合が多い

そして、駐在でもフルタイムでもバイトでも、日本人がロンドンで働く場合、日本語を使う環境であることが多いです。

駐在の人の場合、同僚は同じ日本人の駐在員であることが多いらしいです。

また、YMSや学生ビザ等で日本人が見つけやすい仕事といえば日本食レストランやロンドン在住の日本人相手の仕事(たとえば対日本人向けの不動産会社)となる場合が9割以上だという印象。つまり、高度な英語は必要としません。

レストランやショップでイギリス人相手に接客したとしても、400 word2くらいを使い回せば十分なので、最初の1ヶ月くらいは英語を学んでいると感じるだろうけれど、それからはただのルーティンになってしまいます。

英系企業でフルタイムで働くとしても、日本をターゲットにしている部署だとか、日本に関連するプロジェクトを担当するだとかで、結局日本人や日本語環境で働くことが多いようです。求人もそのようなものばかり。

友達になりたいと思える人がいない

これは、ちょっと個人的な理由かもです。

わたしは元々何人かイギリス人の知り合いがいました。ロンドンに来てから、その人たちを通して、さらにたくさんの知り合いが増えました。しかし、新たなイギリス人の友人はほとんど作れていません。

理由は、興味と相性、その他諸々が一致する人がいないから。

まず、前述したように、イギリス人で新たに友人を求めている人が少ない。友人を欲している人がいたとしてもロンドンでは出会いが少なめ3

この友人を欲している小さなパイを探すことは可能です。しかし、この人たちと気が合うとは限りません。

趣味が同じであるというだけで友達にはなりませんよね。わたしは東京で週に1、2回はテニススクールに通っていましたし、テニスサークルの練習会とかも頻繁に顔を出していましたが、テニス好きの知人は増えても友人はひとりもできませんでした。共通の趣味があるくらいでは友情には発展しません。年齢や性別、性格などの要素も関わってきますし。

ロンドンの場合は「日本人の友達が欲しい」というイギリス人が一定層います。日本のアニメや漫画が好きだったり、サムライに憧れていたり、日本語を勉強していたり——そんな人々。

しかし、わたしはこのような人たちとあまり馬が合いません。

わたしは「日本はイヤイヤ」だったので渡英しました。たしかに、和食は好きだし、日本舞踊をしていたし、日本史が好きだし4と、日本のいくつかの部分は非常に好きですが、総合点としてはマイナス。

日本に1、2回旅行をして、安くて安全でおもてなし精神のある素晴らしい国だと思って、日本大好きラブラブオーラをだしてくる外国人とは、根本的に見解が異なるのです。

そして、本当の意見を言うと、お互い友達にはなれないと察する。彼らが愛するものを、わたしは否定するので。

サムライって結局、暴君、または殺人犯でしょ? え? 辻斬りって知らない? サムライファンなんじゃないの?5

アニメや漫画も、大部分の外国人が好きな日本の定番モノは、わたしはあまり好きではありません。流行っているからといって好きにはならないのだよなあ。というか、大衆と興味が異なるタイプなのかも。

あと、外国人の中には、日本文化が好きだと言うのに、敬語を話すことを拒否したり、年上を敬う文化を嫌悪したり、和を以て貴しとなすという精神を理解していない人がたくさんいます。つまり、自分が気に入った日本文化だけを取捨選択して採用して「日本文化大好き」と述べている。そして、気に食わない要素については「自分は外国人だから、そのルールには従えない」と言う。

そして、わたしのようなある程度は伝統を重んじ且つそこそこ合理性を求めるタイプの人間は、「こういうタイプの人とは友達になれないな」と思う。わたしが友人と呼べる外国人は、こういうタイプではない方々で、それ故、かなり貴重な存在です。というか、外国人だとか英語話者だとか関係なく、純粋なるお友達です。

まあ、この「わたしは外国人だから拒否」というカードは、イギリス文化に対してわたしも使えばいいんですけどね。「日本人だから、ナイフとフォークは使わないよ、箸持ってこい」とか?

まあ、上記のような理由から、生粋のイギリス人とイギリス英語を話す機会は非常に限られています。なので、10年イギリスに住んでいるような人でも、英語がカタコトなんて普通です。

日本にいる外国人も日本語がカタコトの人ってたくさんいますよね。職場や家庭など周りの日本人がみんな英語が堪能なので、学ぶ必要がなかった人たちです。夫・オーストラリア人、妻・日本人、子ども2人という東京在住の方を知っているのですが、息子さんが「パパってぼくより全然日本語できない」って言っていました。

それゆえ、本気で英語力を向上したかったら、大学にでも行って英語で講義を受けるくらいしかない。英語の講義を受けるのではなく、英語で講義を受ける。遺伝学を英語で学んだり、数学を英語で学んだりという意味です。言語はツールなので、ツールを学んでも大幅な上達は見込めません6

駐在やワーホリでロンドンに来て、英語を向上したいと思っている人がいたら、それはほとんど無理だと思っていた方が良い。

本当に英語力を高めたかったら、日本で英語力を高めるためにすることをイギリスでもするしかありません。「住んだら話せるようになる」なんて思っているのは超楽観的で安易すぎます。

わたしは日本での独学のみで日常会話には全く支障がないのですが、このレベルまで来るとロンドンに住んでも、全く英語力が向上する気配がありません。イギリス人とは普通に話せるし、英語のウェブサイトや案内板も読めるし。

しかし、かなり仲の良い友人との会話は英語の勉強、というか訓練になります。イギリス人はhonesty、つまり「正直さ」を大切にしている人が多く、議論好きでもあります。建前の文化があったり、意見の交換を苦手としていたりする日本人とはかなり違う。

仲の良い友達で信頼がある間柄なら、意見が異なる場合は本気で論破しようとしてくる。そして、英語で論理的にはっきり伝えられず議論に負けることがあります(泣)。

日本人的感覚からは、非常に無礼な場合も大いにある。それで譲歩してしまうことも。あとは、誘導尋問してくる人もいます。ここまで来ると恐ろしい。でも、彼らに悪気はないんです。むしろ楽しんでいることも。

このくらい意見交換ができる友人が少しいるので、まあまあ英語力は向上しそうです。

が、本気で語れる英語ネイティブの友人数人くらいなら東京に住んでいたときもいたので、結局はsame differenceです(しくしく)。

昨日はイギリス人の友人G氏とパブに行きました。ちょうどロンドンダービーが行われていました。ロンドンダービーをロンドンのパブで見るのは、なんかいいですね(実はパブに入ったら偶然やってただけ)。

下の写真は、Wetherspoonsというイギリスのパブチェーンの1店舗。G氏によるとイギリス人ならだれでも知っている会社らしいのですが、ウィキペディアにも日本語のページはない7

イギリスに住みはじめるまで、PrimarkやTK Maxxも知らなかったので、このような場所に行ったり情報を得たりしたときに、観光客ではなく住んでいるんだなあと感じます。

ではでは、今日はこのくらいで。

あ、コメントは下にスクロールしてもらえれば書き込めるようになっています。すべて読んでいます。コメント欄に表示されているものは、わたしが手動で承認していますので、反映が遅れるかもです。

コメント欄を記事の直下に置きたいのだけれど、それにはphpをいじらないといけないようなので、面倒くさくて保留中。Phpには詳しくないのです。

Lina (ライター)
早稲田大学卒業後、新卒でフリーランスライターとして活動開始し、現在はロンドン在住。ブログやYouTubeでも情報発信中。鹿児島出身、趣味はテニス。
  1. https://migrationobservatory.ox.ac.uk/resources/briefings/migrants-in-the-uk-an-overview/
  2. 正確な表記はwords。一応言及しとこっと。
  3. といいつつ、実はけっこう出会えてはいるのですが、わたしのケースはレアかなと思います。
  4. というか歴史一般好き。日本史はほぼ単一民族・離れ孤島の歴史という観点からユニークなので、かなり面白い方だとは思います。
  5. ※日本史は好きです
  6. そもそもツールの使い方を知らない、つまり英文法を知らない、発音の仕方がわからない、という初心者の場合ならある程度の向上は期待できると思います。
  7. https://en.wikipedia.org/wiki/Wetherspoons

コメント

  1. そうですね。私はアメリカに二度留学し、アメリカ人のルームメイトから会話会得し、ロンドン駐在時はその会話力で業務こなしてました。4年駐在しましたが、英会話力はほぼ横ばいでした。アメリカでも中西部に居たので、生粋のアメリカ人がほとんど。後自分が20代と若く、言語習得出来たと思います。りなさんは色々考える人ですね。また興味深いブログ楽しみにしております。ありがとうございました。

  2. ブログ再度拝見しました。思い返せば、大学受験で英文法マスターしたのが、英語力の基礎となったと思います。その後、アメリカでのホームステイ、1年間の交換留学、シカゴ大学院留学と経験し、英会話力向上し、ドイツ駐在、ロンドン駐在につながったと思います。かなり時間を掛けて、英語力向上させて来ました。ロンドン帰任後は、転職し、約10年に渡り外資系企業で部長職を歴任しました。その折、年に何度か欧米に出張し、英会話力駆使しておりました。りなさんのブログに触発され、自分の半生振り返りました。引き続き、興味深いブログ拝見いたします。いつもありがとうございます。

  3. ブログ再度拝見しました。私は外資系企業では年に数回、欧米出張がありました。欧州では、パリのラ・デファンスで、リヨン、リスボンで、ウィーンで、チェコのプラハ、スペインのマルガ、アイルランドのダブリン、イタリアのボローニャ、スイスのローザンヌ等で、数日の会議がありました。その往復でロンドン経由便をよく利用しました。JALのビジネスクラス利用、宿泊ホテルは5つ星ホテルと快適な出張でした。この会議は欧米人がほとんどで、アジアからの参加は日本人のみで朝から晩まで、時には深夜まで英語漬けでした。私にとっては、英語力維持に役立ちました。40代は私にとり、人生の黄金期でした。今は自営の大家業に転じ、三年に一度の海外観光を楽しんでます。最近はカナダのバンクーバー、韓国のソウルに家内と二人で行きました。またロンドンには一人で、イタリア、スペイン、イギリスには、末娘と二人で行きました。70歳までは、海外観光つづけたいです。この様に海外を楽しめるのも、英語力のおかげだと思います。りなさん、興味深いブログありがとうございました。ごきげんよう。