わたしが日本が嫌いな理由のひとつに、日本は片親や婚外子に対しての法律が整備されていないことが挙げられます。
日本は人工妊娠中絶が非常に多い国です。2021年度の人工妊娠中絶届出件数は12万6,174件とのこと1。中絶数は年々減少していますが、少子化も進行しています。同年の出生数が81万1,622 人2なので、生まれてくるはずだった命の13%以上が中絶で失われている計算になります。
日本の現在の子育て支援制度や教育システム、一般的なライフワークバランスでは、片親で子育てをするのは非常に難しいという現実があります。
しかし、少子化が先進国での共通の問題かというとそういうわけではありません。
フランスでは新生児の58.5%3が婚外子です。フランスは法的に婚外子を認めただけではなく、3歳になると全員が保育学校に入学できたり、男女ともに産休の取得を法制化していて、産休を拒んだ雇い主には罰金が科せられたり、妊婦の医療費負担がゼロであったりします。子どもを育てやすい社会づくりを進めているようです4
わたしが住むイギリスでも、2021年の未婚の母親から生まれた子どもの割合は51%です5。
ちなみに、日本で婚外子は全体の2.3%6です。これは先進国では非常に低い数字です。
事実婚というのは、日本人にとってはまだ身近ではない言葉ですよね。しかし、事実婚はイギリスではかなり一般的で、結婚していなくてもパートナーと家を買って夫婦のように一緒に住んでいる友人も知っています。彼らはは10年程「付き合って」います。
イギリスは、パートナービザといって、婚姻関係になくてもパートナーの滞在を認めるビザも発行しています。
このようなヨーロッパの状況と比べると、日本は非常に遅れていると言わざるをえません。
片親がしっかりと子どもを育てられる環境が整っていないのはもちろん、日本は共働きでやっと子どもを養える程度の低水準の給料です。婚外子の場合、そもそも両親から十分に養育費や教育費の支援を受けられない可能もがあります。
さらに、日本独自の伝統や同調圧力のようなものが関係しているのか、婚外子や事実婚へは社会的な風当たりも強いと想像されます。
わたしは古い制度を継承しているタイプの会社で正社員をしていました。入社したときに就業規則に目を通していて時代遅れだなと思った点がいくつもあるのですが、そのひとつが忌引に関する規定。
はっきりとした日数はうろ覚えですが、父親または母親が死去した場合7日の忌引が認められ、祖父母の場合は3日かそこらでした。
しかし、例えば、片親や両親がどちらもいない人などは、祖父母が最も近しい家族である場合はありえます。この就業規則は、そんな人たちが規則に反せずに十分に休暇をとれないということを意味しています。
また、事実婚で生まれた人の場合、たとえ実の両親であっても、忌引として休暇が認められない可能性もあります。
日本社会は婚姻関係にある両親の元に子どもが産まれることを前提として、社会が形成されている傾向にあります。それは、社会的弱者が守られない、俗な言い方をするならば、弱者が「損」をしやすい社会だといえます。
イギリスの場合、事実婚が増えている背景に、離婚がしにくいという理由もあるようで、事実婚が増えることが一概に好ましいとはいえません。日本以上に中絶数も多い国です。しかし、少なくとも、個人が自分のライフスタイルに合った選択ができる環境や法整備がなされています。
わたしの周りにも結婚をする人が増えてきましたが、わたしが違和感を感じるのは、結婚をSNSで報告する際に、婚姻届の写真を投稿する人が多いことです。
特に深く考えずに「みんながやっているから」「流行だから」だと察しますが、わたしにはどうしても役所に結婚を届けることが結婚の最も大切な側面だとは思えません。
結婚は、公的機関に婚姻を承認してもらわなければ失われるような絆だということでしょうか。
一方、事実婚のカップルは、いつでも「婚姻」を解消できる浅い間柄というよりは、むしろ、公的機関の承認も法的な堅固な保護も必要ないほど強い絆で結ばれている、と考えることもできます。
また、キリスト教徒の場合、結婚は神への誓いであり、これは公的機関への婚姻の届出より重要な意味を持つようです。
そのため、日本で流行りの婚姻届の結婚報告にはどうしても違和感を感じられずにはいられないのですが、これはわたしだけなのでしょうか。
- https://www.jfpa.or.jp/kazokutokenko/topics/001715.html#:~:text=%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%9C%81%E3%81%8C1%E6%9C%88,%E4%BB%B6%E3%80%8110.8%EF%BC%85%E6%B8%9B%E5%B0%91%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
- https://gemmed.ghc-j.com/?p=50086
- https://www.cairn-int.info/article-E_POPSOC_553_0001–1968-2018-four-demographic-surprises.htm#:~:text=Of%20the%20745%2C000%20children%20born,officially%20designated%20as%20%22illegitimate%22.
- 中野 信子. 不倫 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1694-1698). Kindle 版.
- https://www.manchester.ac.uk/discover/news/over-half-of-children-in-england-and-wales-now-born-to-unmarried-parents/
- 中野 信子. 不倫 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1570). Kindle 版.
コメント
ブログ拝見しました。未婚の母からの子供が、イギリスでは半分以上とは、少々驚きです。映画アラビアのローレンスで、主役が自分は婚外子であると言う場面がありますが、まさにそういう方が、イギリスでは半分という事ですね!私は子供達に結婚するまで、男女の交わりはするな!と教育してきました。私は中絶には反対なので。イギリスはその点がゆるい感じがします。アメリカもその点、同じです。交換留学時、ルームメイトがまだ十代なのに、彼女と交わり過ごして、驚きました。ただ婚外子を保護する法律は、必要だと感じます。興味深いブログ拝見しました。ありがとうございます。